ダイニングに隠れる扉

designphilosophy

ダイニングに隠れる扉

この家には、少し不思議な扉があります。
毎日過ごすダイニングのすぐ横、壁一面に張られた木毛セメント板。その中の一枚だけが、ひっそりと扉になっているのです。

"n"の家

#house#kitchen#renovation#設計思想


高さ1820mm、幅910mm。サブロクサイズのこの扉は、同じサイズの木毛セメント板と並んで貼られているため、使わないときには扉であることに気づかれません。
表面のスリット幅、扉枠とヒンジの納まりは、図面とCGで何度も検討し、現場で職人さんとすり合わせながら精度を詰めていきました。
きっかけは、プランニング中の課題でした。
「トイレとダイニングの距離」をどう設計するか。限られた平面の中で機能的な配置を優先した結果、ダイニングのすぐ近くにトイレを置く必要が出てきました。
そこで、正面から見せるのではなく、「隠す」という方向に発想を切り替えました。
完成した空間では、来客がトイレの存在に気づかないこともあります。
「えっ、ここ扉だったの?」と驚かれることも多く、そのリアクションはどこか嬉しいものです。使うときにだけ“現れる”扉は、日々の暮らしの中で、ほんの少しだけ遊び心を添えてくれます。

さらに、扉の取っ手にもひと工夫。クライアントのイニシャル「n」にちなんで製作したオリジナルの「nノブ」は、機能だけでなく、家全体の雰囲気をやわらかくする小さな仕掛けです。


完全なフラッシュドアにせず、どこかに人の気配を残しておくこと。それがこの扉の大事な役割でもあります。
制作物だけあって、扉は少し重さがあります。それでも「気にならなかった」と言ってくださった施主の言葉にほっとしました。他にはない扉があることで、日々の暮らしがちょっと楽しくなる。
そんな空間のあり方を、これからも大切にしていきたいと思っています。

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