designphilosophy

ひとつながりのフレーム

家の中にある、枠のような大きな窓。
その窓は外に面しているのではなく、リビングと子ども室をつなぐための開口部として設けられたものです。
今回の主役は、この「フレーム」

サクとハルの図書館

#house#kitchen#renovation#設計思想

「フレーム」とでも呼ぶべきその場所は、子どもたちにとっては格好の遊び場。
お絵かきしたり、腰掛けて絵本を読んだり、戦隊ごっこの舞台にもなったり。
窓のかたちは、どこか門のようでもあって、その内側に足を踏み入れると、世界が少し変わるような感覚を覚えます。
空間を仕切りながらも、どこかでつながっている——そんな不思議な感覚が、この窓を通じて生まれていました。
開口部のサイズは幅2200mm・高さ1500mm。
数字だけを見ると大胆な寸法ですが、この家ではむしろそれが空間のバランスを整えています。
壁一面を大きく開くことで、2つの部屋がひとつながりの空間として感じられ、親がリビングで過ごしながらも、子どもの気配をそっと感じ取ることができます。
完全に閉じないことで、安心感と自由さが同居する——そんな距離感が、家族の暮らしにはちょうどよいのかもしれません。
さらにこの窓は、ただの“抜け”ではありません。

奥行き500mmの開口部は、子どもたちが腰かけて過ごせるベンチのようでもあり、ときにテーブルとしても活躍します。
一部は収納棚にもなっており、空間に散らばりがちな小物も自然と片付きやすい構成に。
建築が与えるのは「使い方の決まった場所」ではなく、「どう使ってもいい余白」なのだと感じます。
家族が気ままに行き来する様子を、空間がそっと受け止めている。
そんな場面に出会うたび、設計者として小さな喜びを覚えます。

「子ども部屋をどうするか？」は、家づくりにおいてたびたび話題になるテーマです。
きっちりと個室をつくるのもひとつの方法ですが、暮らしの中での「つながり」を大切にしたいなら、完全に区切らない設計も選択肢になり得ます。
この家のように、ひとつの窓を介して家族の視線がふっと交わる空間は、きっと子どもの記憶にも残っていくはずです。