生活感のある窓はいらない

philosophy / 考えていること

生活感のある窓はいらない

この家には、「普通の窓」がありません。
街を歩いているとよく見かける、腰高の引違い窓。洗濯物が揺れるその向こうに、外の景色がぼんやりと見える……
そんな窓とは少し違ったアプローチで、この家の窓はつくられています。
ここにあるのは、生活の“ため”の窓ではなく、空間の“体験”をつくるための窓です。


視線が抜けていく方向を想像しながら、どこに立てば何が見えるのか、どんな風が流れるのか。

ひとつひとつ設計していくことで窓のかたちや高さをつくっています。

空が広がる窓、ロフトの上から外を見下ろせる窓、光が壁に舐めるように広がる窓……。それぞれの窓が、異なる時間帯に異なる表情を見せながら、日常のシーンを切り替えるように空間を演出してくれています。

大切にしたいのは、光や風の通り道を確保しながら、「その土地だからこそ開けたくなる窓」になっているかどうかということです。

例えば、隣の敷地にあるミカンの木。その緑がちょうど視線に入る高さに窓を設けて、ほんの少しだけ“風景を借りる”ように空間に取り込んでいます。
季節の変化を窓越しのミカンで感じることができる。そういった地味ながらも意図を込めた工夫の積み重ねが、この家の風景をつくってくれています。

ある日この家を訪ねたとき、ちょうど路地を歩いていると、窓の向こうからお子さんが顔を出してくれました。
手を振る姿がガラス越しにふわりと現れて、こちらの心もふっとほぐれる。
「窓がつないでくれる」とは、こういうことかもしれないと思った瞬間でした。窓は、光を取り入れるためであり、風を導くためのものでもあります。
でも同時に、景色をつなぎ、人と人をつなぎ、空間を開いてくれます。
窓の在り方を少しだけ見つめなおすだけで、日々の暮らしのなかに新たな風景が広がるかもしれません。

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