広く見せたいなら天井を高く——というのが一般的な設計手法ですが、ここでは「あえてきゅっとした」ようなカタチ。
空間がそっと身を縮めるように、家族の居場所がつくられています。
窓の前に立つと感じる、迫ってくる天井。低いところではH=1600程度しかありませんから、数値だけだと窮屈な寸法です。ただそれを感じさせないのが今回の設計のポイント。窓まわりには思いがけない空間が待っています。
ひとつは視線の抜け。ベンチに座ると天井の低さを感じさせない開放感が生まれています。
道路側を見ると外と繋がっているようにも感じられ、振り向いて室内を見るとメガホンのような空間が広がりを感じさせてくれます。
延べ24坪というコンパクトな住まいにおいて、天井高を高くするのではなく“視線の設計”によって、空間の広がりをつくっています。天井が最も低い場所は、「最も広がりを感じる場所」だったのです。
元々低い天井が好みだった施主に対して提案したものですが、この空間は以前から私が是非やってみたい、と思っていたもの。
完成後に訪ねたとき、窓辺のベンチにきょうだいが並んで、静かに本を読んでいました。とても気に入ってくれている様子で、思わずこちらの背中がゆるむような瞬間でした。
ベンチは、座っても、寝そべっても、お絵描きの台にしてもいい。用途を決めすぎず、居場所をひらいておくことで、空間と人のあいだにささやかな関係が育っていきます。
家を面積や帖数で測るのは、ある意味自然なことです。でも、それだけでは見えてこない“空間の働き”に目を向けることで、本当に心に残る居場所が浮かび上がってくる——そんなことを、この家で実践できた気がしています。