ふかふかのカーペットに腰をおろした瞬間に感じる、やわらかな安心感。
ふと見ると、お兄ちゃんが段差に腰かけて本を読み、奥ではお母さんが本棚の前でくつろいでいる。
お互いの存在を感じながら、それぞれにとって心地よい時間が流れています。

この空間は、はじめから3つのゾーンを重ねるように設計されています。
ダイニングキッチン、リビング、子供室。
それぞれの場所を壁で仕切るのではなく、床の高さや天井のかかり方、家具の配置によって
「つながりながら、ゆるやかに分かれる」構成にしています。
まるで重なったレイヤーの中に、気配の濃淡を織り込んでいくような設計です。
訪れたときに印象的だったのは、窓辺の小上がりで遊ぶ子どもたちと、それを少し離れたソファから見守る親御さんの姿。
声は届く距離にありながら、お互いがちょうどいい間合いでいられることが、暮らしを心地よいものにしているのだと感じました。
大きなワンルームを、どう心地よく使っていくか。
家具で仕切るのではなく、床や天井、本棚の構成によって“感じる境界”をつくっていく。
そんな設計の工夫が、住まう人のリズムに寄り添いながら、日々の風景を少しずつ豊かにしてくれるのだと思います。