窓の前に立つと、ふと天井の近さに気づきます。
数値にすれば1800mmほど。決して高いとはいえない寸法ですが、不思議と圧迫感はありません。
むしろ腰を下ろすと、窓の外へ視線が抜けて、ひらけた開放感が広がります。
振り返れば、室内はメガホンのように奥へ広がっていく。
天井が最も低い場所は、「最も広がりを感じる場所」だったのです。

延べ24坪というコンパクトな住まいにおいて、天井高ではなく“視線の設計”で広がりをつくる。
段差や吹き抜けとは違う考え方で計画したこの空間は、クライアントにとっても私たちにとっても、期待以上の開放感を持つ場所となりました。

家を面積や帖数で測るのは、ある意味自然なことです。でも、それだけでは見えてこない“空間の働き”に目を向けることで、本当に心に残る居場所が浮かび上がってくる——そんなことを、この家で実践できた気がしています。