
構造上必要な壁だけど、愛着のあるものになってもらいたい。
視界を遮る単なる壁から、ふとした時に視界に入ってくる、なんとなく気になる存在。
単なる壁ではなく、家族の暮らしに寄り添えるものができないか、と考えデザインしたものがこの小窓です。

窓のかたちはクライアントのイニシャル「n」にちなんだもの。
この「nマド」は、オブジェのような佇まいを持ちながら、視線をやさしくつなぎ、空間に穏やかな抜けをつくってくれています。


暮らしが始まってからは、子どもがのぞき込んだり、ちょっとした飾りが置かれていたり。
壁の一部だったものが、家具のように家族の日常のひとつになっている様子を見て、改めてこの選択はよかったと思えました。

クライアントの暮らし方に寄り添えるにはどうしたらいいか、単に構造的な制約や機能だけでなく
「どのように感じるか」を少しだけ立ち止まって考えてみる。
その積み重ねが、家と人との距離を、少しずつ近づけてくれるように思います。